パン業界の市場規模と今後の展望2025|数字から見るチャンスと課題

パン業界は日本人の食生活に欠かせない存在です。
コンビニやスーパーのベーカリー、専門店のパン屋まで、さまざまな形で私たちの暮らしに根付いています。では、その市場規模は実際どれくらいなのでしょうか?
そして2025年以降、パン業界はどのような展望を描いているのでしょうか。
本記事では、矢野経済研究所や富士経済といった調査機関の最新データをもとに、パン業界の市場規模を整理し、今後のトレンドや課題を具体的に解説します。
また、現場で経営にあたってきた経験も交えながら、数字の読み方や売場づくりのヒントをお伝えします。
業界の動きを俯瞰しつつ、経営判断や新規出店の参考にできる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
パン業界の市場規模をどう捉えるか?出荷金額と小売金額の違いを知っておくことが第一歩

パン業界の「市場規模」という数字、調べるといくつか出てきます。
「あれ?どの数字が本当?」と感じたことはないでしょうか。
実はこれは調査の「物差し」が違うためです。
- メーカー出荷金額ベース:製パンメーカーが出荷した金額を合計したもの。
- 小売金額ベース:消費者が実際に店頭で支払った金額。
同じ市場でも測り方が違うので、数字の大きさが変わるのです。
矢野経済研究所の調査では「2023年度の国内パン市場は1兆6,629億円(メーカー出荷ベース)。
2028年度には1兆8,903億円へ成長見込み」と発表されています(矢野経済研究所:https://www.yano.co.jp/press/press.php/003818)。
一方、富士経済の調査では「2021年は2兆8,517億円、2023年見込みで3兆1,071億円(小売金額ベース)」となっています(富士経済:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23101&la=ja)。
数字の大きさは違いますが、両者が共通しているのは「市場は緩やかに拡大している」という点です。
2025年のパン業界|価格上昇の中でも需要は底堅く、「便利さ・手軽さ・コスパ」がカギ

コロナ禍を経て、パンの需要は回復し、2023年度にはコロナ前を超えました。
2025年も拡大傾向が続くと予想されています。
背景にあるのは、
- 原材料価格の高騰に伴う値上げ(単価アップ)
- それでも「日常食」として選ばれ続けているパンの存在感
- 惣菜パンや菓子パンなど「手軽で満足感のある」カテゴリーの人気
例えば、農林水産省は2025年4月期に小麦の政府売渡価格を前期比3%引き下げと発表しました(農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/press/yk/hogana/240328.html)
コスト面の負担が少し和らぐ兆しもあります。
一方で、人件費やエネルギー価格は依然として不安要素。
経営者としては「原価」「価格」「オペレーション」を見直しながら戦略を練る必要があります。
データで見る市場規模|主要調査を横並びで比べる

ここで、二大調査機関のデータを整理してみましょう。
メーカー出荷金額ベース(矢野経済研究所)
- 2023年度:1兆6,629億円
- 2028年度予測:1兆8,903億円
小売金額ベース(富士経済)
- 2021年:2兆8,517億円
- 2023年見込み:3兆1,071億円
出典:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=23101&la=ja
見方のポイントはこうです
出荷ベース=業界の「供給力」やメーカー側の動きを把握する指標
小売ベース=消費者の購買行動を直接表す指標
どちらも補完しあう関係なので、両方を押さえると経営判断に役立ちます。
伸びているカテゴリーとチャネル―「毎日食べられるパン」が強い

成長が期待されているのは「食卓パン」「菓子パン」「惣菜パン」。
日常使いのパンがやはり強いです。
チャネルで見ると…
- スーパーのインストアベーカリーが刷新を進めている
- コンビニのプライベートブランドもリニューアルが加速
- 冷凍パン市場は業務用・家庭用ともに拡大中
(矢野経済研究所:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3380)
私自身も店舗を運営していた経験から言えるのは、「手軽に買えてすぐ食べられるパン」の売上は安定するということ。
特に昼食・軽食需要に強いラインナップは数字に直結します。
成功事例に学ぶ!

具体的な事例として注目されているのが、スーパー「サミット」のインストアベーカリー「ダン・ブラウン」。
人気商品「ザクふわっ!メロンパン」は月間10万個以上売り上げると紹介されています。
運営のポイントは、
- 定番商品の品質を見直しながら値頃感を維持
- 季節商品や新商品を投入し、売り場にニュース性を持たせる
- オペレーション負担を増やさずに「目立つ商品」を回していく
私の店でも、季節ごとに新しいパンを加えると売上に波が生まれました。
やはり「飽きさせない工夫」は数字に表れると実感しています。
実務でどう使うか?市場データを経営判断につなげる流れ

せっかくの調査データも、「読みっぱなし」では意味がありません。
具体的には、次の流れに落とし込むと使いやすいです。
- 市場データを確認(矢野・富士経済・公的統計)
- 自店の商圏や競合環境と照らし合わせる
- どのカテゴリーを強化するか決める
- 原価や人件費に見合う価格帯・容量設計をする
- 新商品や売場演出を試し、KPIで検証
- 四半期ごとに結果を見直す
このサイクルを繰り返すことで、数字の裏づけを持った経営判断ができます。
まとめ――2025年のパン業界は「緩やかに拡大」。日常需要と作りやすさを両立させよう

市場は緩やかに拡大傾向
- 日常使いのパンが伸びる
- 価格・人件費・原材料コストに注意が必要
- 「利便性」「コスパ」「ニュース性」が売場を強くする
2025年以降も、大きな成長はゆるやかですが、日々の運営に落とし込めば確実に成果は積み上がります。
パン屋オーナーにとっては「数字を理解し、現場にどう活かすか」が最大のポイントです。
パン業界は、消費者の食生活の変化や健康志向、DXの浸透などによって今後も進化を続けていきます。
市場データを冷静に把握しつつ、自店の強みを生かした経営戦略を描けるかどうかが、2025年以降の成功のカギとなるでしょう。
これから開業を考える方にとっても、すでに店舗を構えているオーナーにとっても、数字と実際の現場感覚を結びつけることが、意思決定の大きな助けになります。
変化の波に乗りながら、地域に愛されるパン屋づくりを進めていきましょう。

この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
現場視点と実務知識を活かし、納得のいく譲渡をサポート。
株式会社アルチザンターブルは、中小企業庁のM&A支援機関に登録されており、「中小M&Aガイドライン」を遵守した適正な支援を行っています。
M&A支援業者への手数料を補助する「事業承継・M&A補助金」も条件に応じご活用いただけます。



