パン屋廃業の手続きと必要書類|専門コンサルタントが解説

「お店を閉めたいけれど、どんな書類が必要で、どこに提出すればいいのか全然わからない…」
これは廃業を検討しているパン屋オーナーからよくいただく声です。
私自身、これまでに多くのパン屋オーナーから「譲渡」と「廃業」の両方の相談を受けてきました。
その経験から言えるのは、手続き自体は決して複雑ではないが、準備不足や情報不足でトラブルになるケースが多いということです。
この記事では、コンサルタントの視点から「廃業手続きの流れ」と「必要書類」を解説し、さらに現場でよくある注意点も交えてご紹介します。
目次
成功する廃業準備の全体像

廃業は「店を閉める」と一言でいっても、流れを整理しておかないと混乱します。
まず押さえていただきたいのは以下のステップです。
- 営業終了日の決定と関係者への通知
- 在庫・機器の処分または返却
- 税務署や市区町村への「廃業届」提出
- 従業員への雇用手続き
- 営業許可証の返納
実際、ある個人店のオーナー様は「閉店当日に廃業届を出せばよい」と思い込み、後から税務署から問い合わせが来て慌ててしまいました。
原則は廃業の日から1か月以内に提出が必要です。
国税庁の公式サイト(個人事業の廃業届出書)でも明記されています。
廃業に必要な書類と提出先

「どんな書類を、どこに出せばよいのか」が最も混乱するポイントです。
実際にコンサルティングでサポートしてきた中でも、この部分を間違えて二度手間になってしまった方が多くいらっしゃいます。
税務署へ提出する書類
- 個人事業の廃業届出書(国税庁)
- 所得税の青色申告取りやめ届出書(青色申告をしていた方のみ)
- 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員を雇っていた場合)
- 消費税の事業廃止届出書
これらはすべて税務署が窓口です。
特に「廃業届出書」は、必ず最初に出す書類だと覚えてください。
年金・社会保険関係
従業員を雇っていた場合はさらに必要です。
- 健康保険・厚生年金保険の適用事業所全喪届
- 雇用保険適用事業所廃止届
- 従業員の離職票
「スタッフ数名しかいないから」と油断していたパン屋オーナーが、後で従業員から「離職票がもらえずに失業給付が受けられない」と相談を受けたこともありました。こうした手続きは従業員の生活に直結しますので、早めに準備しましょう。
市区町村・保健所関係
- 事業廃止届(事業税関係)
- 固定資産税・償却資産に関する申告(必要な場合)
- 営業許可証の返納(保健所)
食品を扱う業種であるパン屋は、最後に必ず「営業許可証の返納」が必要です。
忘れると、後日自治体から通知が届くケースもあります。
廃業手続きでよくある注意

従業員対応
廃業はオーナーにとっての決断ですが、従業員にとっては突然の生活変化になります。
労働基準法上、解雇予告は原則30日前。
補償や離職票の発行も必須です。
リース・賃貸契約の整理
パン屋はオーブン・冷蔵庫などリース契約が多い業種です。
解約条件を確認せずに閉店すると、思わぬ違約金が発生することも。
私が支援したケースでは、残債が数百万円になり「譲渡に切り替えた方が良い」と判断したこともありました。
税務処理
廃業後も最後の年度の確定申告(所得税・消費税)は必要です。
「もう店を閉めたから大丈夫」と思っていると、税務署から申告漏れの通知が来る場合があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 廃業届はいつまでに出せばいい?
A. 原則として、廃業日から1か月以内です。
Q. 従業員がいない場合も同じ?
A. 雇用保険や社会保険の手続きは不要ですが、税務署と市区町村への届出は必須です。
Q. 法人のパン屋を閉める場合は?
A. 株式会社・合同会社など法人の場合は「解散登記」「清算人の選任」「法人税の確定申告」などが必要になります。専門家(税理士・司法書士)への相談を強くおすすめします。
まとめ
- パン屋廃業には 税務署・市区町村・年金事務所 への複数手続きが必要
- 従業員対応・リース契約・営業許可返納が見落としポイント
- 書類は必ず 国税庁 や自治体の公式サイトを確認して最新の様式で提出
もし「廃業と譲渡で迷っている」場合は、譲渡の選択肢も検討してください。
後継者不足の解決方法で具体例を紹介しています。
パン屋廃業の手続きに不安がある方へ
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この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別案件については専門家にご相談ください。
監修・執筆:BakeryBiz編集部

この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
現場視点と実務知識を活かし、納得のいく譲渡をサポート。
株式会社アルチザンターブルは、中小企業庁のM&A支援機関に登録されており、「中小M&Aガイドライン」を遵守した適正な支援を行っています。
M&A支援業者への手数料を補助する「事業承継・M&A補助金」も条件に応じご活用いただけます。



