パン屋の原材料価格高騰への対応策|食パン比率が高い店でも利益を守る実務ガイド

小麦・バター・油脂・包装資材…
ここ数年、パン屋を取り巻く原材料費の高騰は「一時的」ではなく 構造的な問題 になりました。
特に 食パン比率が高い店は“打撃を受けやすい業態” です。
主材料の値動きが直撃し、わずかな高騰でも粗利率が急落するからです。
しかし、安心してください。
私たちが支援してきた店舗では、原材料高騰の波を受けながらも、売上を落とさず、粗利率を維持した店が数多く存在します。
そして、成功した店には必ず “共通点” があります。
この記事では、「価格高騰を恐れずに利益を守るための実務」を、初心者にも理解しやすい言葉で、深く丁寧に解説します。
読み終えるころには、あなたの店が“高騰に強いパン屋”へ変わる具体的な道筋 が描けるはずです。
目次
原材料高騰が起きている背景

原材料高騰は「運が悪い時期に重なった」のではありません。
私たちが支援している現場で感じるのは、“高騰はすでに構造的” だということ。
以下の要因が複合的に影響しています。
- 世界的な小麦争奪(輸入依存国の競争増)
- 原油高(輸送・包装資材のコスト増)
- 円安(原材料価格が円価で上がる)
- バターや乳製品の供給制限
- 労務費上昇による仕入価格転嫁
など
つまり、「価格は必ず下がる」と期待するのは危険 ということです。
コンサルとして経験してきた店の多くは、「値上げを先送りした1年」が、後々の資金繰りに最も響いています。
高騰は避けられない。
だからこそ “耐えられる店の仕組み” を作る必要があるのです。
パン屋への影響を数字で把握する

店を守る第一歩は “数字で現実を見る力” を持つことです。
たとえば、食パン1斤の原価構造を見える化すると、このようになります。
食パン1斤の基本原価例(税抜)
- 小麦粉:42円
- バター:23円
- 砂糖:9円
- イースト・塩:6円
- 包材:10円
→ 合計:90円前後
小麦が10%上がる、バターが15%上がる。
それだけで 原価が100円を超える ことも珍しくありません。
ところが、食パンの販売価格は地域相場が厳しいため、値上げがしづらい店舗も多いのが実情。
だからこそ、「原価を下げる」+「粗利を守る設計」 の両輪が必要になります。
支出を抑えるための現実的なコスト対策

原材料高騰の対策というと、
- 仕入先を変える
- 原価の安い材料に切り替える
と考えがちですが、現場では“これだけ”だとうまくいきません。
パン屋は「再現性」と「味の一貫性」が命だからです。
そこで、成功している店が実際に行っているのは以下の方法です。
仕入れ単価の見直し(メーカー直取引の検討)
20坪規模の店でも、扱う量によっては 問屋→メーカー直送 に切り替えできる場合があります。
直取引での割引が難しくても、「年間購入量の見通しを提示」すると交渉の余地が出ます。
包材コスト削減(意外と効果が大きい)
- 高級包材 → 汎用品へ切替
- プラスチック袋 → 薄手バージョン
- シール類の統合
包材は地味ですが、月1〜3万円の改善が積み上がると年間30万円超 の改善につながることも珍しくありません。
廃棄ロスを減らす“予測販売”
特に食パンは廃棄が大きい商品です。
- 前日売上比
- 天気
- イベント日
- 学校行事
これらを掛け合わせた“日次の仕込み基準”を作るだけで、廃棄が半減した店もあります。
電気契約の見直し(盲点)
オーブン・ホイロ・冷蔵庫などなど。
パン屋は電力依存の業態です。
電気契約(容量・プラン)を見直すだけで、月5,000〜15,000円改善したケースもあります。
私から皆さんに強くお伝えしたいのは、「小さな改善の積み上げが店を守る」 ということです。
原材料だけにとらわれず、“固定費も一緒に見直す”発想が利益を守る鍵になります。
売上を落とさずに値上げする技術

多くのオーナーが悩むのが 値上げ です。
しかし、値上げは“お客様を失う行為”ではありません。
上手に伝えれば、値上げ後に売上が上がる店すらある のです。
値上げのポイント
- 理由を明確に伝える
→ 小麦・バターなどの高騰を丁寧に説明 - 値上げ幅を段階的にする
→ 10円→20円と段階的に - 同時に価値を上げる
→ 焼成時間の見直し、食べ方提案の追加 - 店頭ポップとSNSで事前に告知
私の支援先でうまくいった店は、値上げの3週間前からSNSで丁寧に説明 をしました。
結果として、「大変ですよね、応援します」とお客様から声をいただき、売上はむしろ安定しました。
誠実なコミュニケーションが、お客様の理解につながります。
商品設計で粗利を守る方法(食パン店向け)

食パンはシンプルな商品ですが、実は 粗利率の改善余地が大きい商品 です。
ロスを前提とした生産量設計(“捨てない前提”を捨てる)
完全廃棄ゼロを目指すと、機会損失が大きくなります。
食パンは“売り切れ前提での追加焼成”が現実的です。
副材料の最適化
原価に影響するポイントは以下。
- バター比率
- 牛乳→水への置換比率
- 砂糖量(風味バランス)
小さな調整ですが、年間で30〜80万円の改善 につながることがあります。
ラインナップの整理
食パンラインが多すぎると、ロス・人件費・発注リスクが跳ね上がります。
食パン専門店でも 3〜4種類が適正 です。
“高粗利商品”と組み合わせる
- ジャム
- スプレッド
- 厚切りトーストセット
- 食パンアレンジレシピ冊子
このような 粗利率の高い関連商品 は、食パン高騰時の強い味方になります。
成功事例:20坪・食パン比率60%の店が粗利率を維持できた理由

横浜市内の20坪・食パン比率60%の店。
原価高騰で 粗利率が32% → 26% に急落した状態でした。
行ったこと(3ヶ月)
- 食パン3種 → 2種に整理
- 包材を見直し、月1.8万円改善
- 電力契約を見直し、月1.2万円改善
- 値上げ+価値説明を丁寧に発信
- 生産量をデータ化してロスを半減
- 食パンジャムセットを導入し客単価アップ
結果
- 粗利率:26% → 33%に回復
- オーナーの生産負荷も減り、営業時間延長も可能に
- SNS経由の新規来店が増加
ポイントは、“1つの対策ではなく複数の小さな対策を積み重ねたこと” です。
原材料高騰は魔法のような解決策はありませんが、着実に積み上げることで、確実に利益を守ることができます。
よく聞かれる質問

店舗の立地状況で回答も変わりますが、このようなご質問をよく聞かれますのでご紹介します。
Q. 小麦を安い銘柄に変えても大丈夫?
A. 味の劣化が起きやすいため慎重に。ブレンド比率の調整を推奨します。
Q. 値上げはどれくらいの頻度で行うべき?
A. 年1回が理想。半年に小幅調整する店舗も増えています。
Q. 廃棄ゼロを目指したほうがいい?
A. 食パンは“売れる日と売れない日”の差が大きいため、ゼロ目標は生産効率を悪化させます。
まとめ:高騰は「経営力が試される局面」。正しい対策で必ず乗り越えられる

材料が上がるのは避けられない。
ですが、どの店も同じ条件で戦っています。
違いが出るのは、「何を知り、どう設計するか」だけです。
あなたの店を守るために必要なのは、
- 原価の見える化
- 小さな改善の積み上げ
- 顧客への誠実な説明
- 商品ラインの再設計
- 売上と粗利の両面改善
難しいように見えますが、一つ一つは決して特別なことではありません。
むしろ、“正しく理解して、正しく行動する”
これだけです。
原材料高騰は試練のように見えますが、実は 「経営力を磨き、未来を強くするチャンス」 でもあります。
BakeryBizは、あなたの店が“不安な時代でも利益を残せる店”へ変わるための伴走パートナーでありたいと考えています。
一歩ずつ、いっしょに強い店を作っていきましょう。
BakeryBizでは、パン屋専門で店舗売買・譲渡・M&A支援を行っています。
また、店舗の経営改善・コスト分析・黒字化支援も行っています。
スタッフは、全員がベーカリー出身者です。専門知識をもった経験豊富なスタッフがお客様を最後まで丁寧にサポートいたします。
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この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
現場視点と実務知識を活かし、納得のいく譲渡をサポート。
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監修・執筆:BakeryBiz編集部
※本記事は公開情報と筆者の実務経験に基づき執筆しています。統計値は出典の算出方法・時点により変動します。
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