パン屋の廃棄ロス削減術|利益を守るための実務と成功事例

パン屋の経営において「廃棄ロス」は、利益を最も圧迫する見えにくいコストです。
原材料価格の高騰が続く今、ロス管理は“経費削減”ではなく“利益率そのものを守る経営戦略”といえます。
この記事では、プロの現場で使われているロス削減の実務、数値の見方、成功店舗の事例、そして「明日からできる改善策」を体系的に整理しました。
読み進める中で、あなたの店舗に“今すぐ改善できるポイント”が必ず見つかるはずです。
目次
廃棄ロスが利益を圧迫する理由

パン屋の廃棄ロスは、単に「売れ残り」ではなく、以下の複合的な損失を生みます。
ロスが生む“実際の損失”
- 原材料費の損失
- 廃棄処理の手間・時間
- 製造スタッフの労働時間の浪費
- 廃棄量増加による衛生管理コスト
- 需要予測のズレ → 過剰生産 → 利益率悪化
たとえば、日販10万円の店舗でロス率10%の場合、年間約360万円の損失になります。
これは家賃1年分に匹敵することもあり、ロスは「経費」ではなく“粗利を削る最大要因”と言えます。
多くのオーナー様は「ロス率10%くらいなら普通」と感じています。
しかし、廃棄ロスは“減らせる固定費”です。
ロスが5%下がれば、それだけで利益率が一気に改善します。
私は店舗改善の現場で、ロス率10%→4%に下がっただけで“年間200万円以上の利益改善”が起きた事例を何度も見てきました。
「売上を増やすより、ロスを減らすほうが早い」これは多くの成功店に共通する考え方です。
パン屋特有のロス構造を理解する

パン屋のロスは、製造〜販売のどの段階にも潜んでいます。
パン屋ならではのロス要因
- 「焼き立て」提供を優先するための少量多品種生産
- 天候や曜日による販売波動
- 製造ロス(成形ミス、発酵ミス、焼成ミス)
- 販売ロス(品切れ回避のための過多生産)
- 陳列ロス(売れ筋への棚割り調整不足)
特に“売上が安定している店ほどロスが出やすい”という傾向があります。
理由は、安定売上を守るため「在庫に安心を求める」製造計画になりがちだからです。
多くのパン屋がロスを「売れ残り」とだけ捉えています。
しかし、本当のロスは “売らなくてもよかった分を作ったこと” にあります。
製造の段階でロスが決まるケースは非常に多いです。
だからこそ「販売予測」ではなく「製造計画」の精度向上が、最も価値の高いロス削減施策になります。
ロスは“結果”ではなく“設計の歪み”と捉えて改善していきましょう。
廃棄ロス削減の実践施策(即効性あり)

ここでは現場で効果が高かった施策だけをまとめます。
製造量の“2段階方式”
午前:基準量
午後:売れ行きに応じた追加量(プチ追加)
→ 多くの店舗で ロス20〜40%削減 が起こる方法。
売れ筋・死に筋の分類
売上実績 × 廃棄率で分類すると在庫過多が一目で分かる。
- 売れ筋 × 廃棄低 → “利益の柱”
- 売れ筋 × 廃棄高 → “改善対象”
- 売れない × 廃棄高 → すぐ改善 or 終売検討
POPで売上を10〜25%押し上げる
POPの改善だけで“売れ残りが売れ筋に変わる”ケースがあります。
- コンセプト説明
- 食べ方提案
- 焼き立て時間の掲示
- 想定シーンの提案(朝食・子ども向けなど)
AI型販売予測ツールの活用
クラウド型の販売予測ツール(POS連動)はロス削減に直結します。
- 曜日
- 天気
- 過去の販売データ
- 行事・季節要因
これらをAIが予測し「焼成量」を提案します。
夜間の“おつとめ品”を計画化
値下げ販売は「最後の手段」でなく、計画的施策に。
- 値下げタイミングを固定化
- 値下げ対象を明確化
- 値下げ後の売上データを分析
店舗によっては、ロスを半分以下にできた事例もあります。
ロス削減は「気合」や「頑張り」では続きません。
ポイントは “仕組み化” です。
- 製造量の基準を作る
- 売れ筋×廃棄率でラインナップ整理
- 補充の判断基準を作る
- 値下げのルールを決める
一つ一つは小さな作業ですが、組み合わせると驚くほど利益が改善します。
成功店舗のロス削減事例

事例①:ロス率12% → 4%(都市型ベーカリー)
施策
- 午後追加焼成を導入
- 死に筋商品の終売
- 売れ筋の棚面積を拡大
結果
年間200万円以上の利益改善。
事例②:AI販売予測導入で生産調整(郊外店)
■施策
- 過去3年のデータを元にAI分析
- 曜日ごとの生産量を自動化
■結果
廃棄量が35%減少。人件費削減にも寄与。
事例③:スタッフ主体のロス削減会議(ショッピングモール内)
施策
- スタッフが「ロス原因」を付箋で見える化
- 改善アイデアを毎週実施
結果
スタッフの主体性向上 → ロスが半分に。
成功店は“特別なツール”より“継続できる習慣”を大切にしています。
ロス改善は「みんなで成功体験を積み重ねるプロジェクト」なんです。
習慣化すれば、ロスは自然と減っていきます。
数値管理:ロス率・歩留まりの見える化

ロス率の公式
ロス率 = 廃棄額 ÷ 製造原価
一般的に 5%以下 が優良とされます。
歩留まりの基準化
歩留まり=製造計画の精度。
- 標準歩留まり(目標値)
- 実績歩留まり
このギャップを毎月チェックするだけでロスが減ります。
「数字は苦手で…」というオーナー様ほど、ロス削減の伸びしろが大きいです。
必要なのは複雑な会計ではなく、
- ロス率
- 歩留まり
- 売れ筋比率
この“3つだけ”で十分、利益改善は実現します。
スタッフと一緒に取り組むロス削減体制の作り方

スタッフが主体的に動く仕組みを考えてみましょう。
- ロス原因の共有
- 改善提案の表彰
- 毎日のロス共有ミーティング
- スタッフごとの担当商品制
これらの仕組みが、スタッフが主体的に動いてくれるきっかけになります。
ロス削減は“数字の話”ではなく“文化づくり”です。
スタッフが「ロスを出さないこと=いい仕事」という感覚を持つと、店舗全体が強くなります。
まとめ:ロス削減は「効率化」ではなく「価値づくり」

廃棄ロス削減は、「節約」ではなく「利益を守り、価値を生む経営行為」です。
ロスが減ると…
- 利益率が上がる
- スタッフの働き方が改善する
- 商品ラインナップが洗練される
- リピート率が上がる
つまり、ロス削減はパン屋の“経営改善の起点”なのです。
焦らず、できることからひとつずつ。
あなたの店の利益と働き方が、必ず変わります。
BakeryBizでは、店舗ごとのロス分析や改善提案も行っています。
「どこから手をつけるべき?」という段階でも大歓迎です。
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この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
現場視点と実務知識を活かし、納得のいく譲渡をサポート。
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監修・執筆:BakeryBiz編集部
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