パン屋開業時に必要な許可と資格|失敗しないための実務ガイド

「パン屋を始めたいけど、何から手続きすればいいの?」
開業相談で最も多いのが、この“許可と資格”に関する質問です。
実は、パン屋の開業に必要な許可はそこまで多くありません。
ただし 順番 を間違えると、内装工事が完了しても開業日が遅れる…というトラブルが現実に起こります。
この記事では、全国のパン屋開業を支援してきたコンサルタントの立場から、
- 開業に必要な許可(保健所)
- 必要な資格(食品衛生責任者)
- 店舗設計で気をつけるポイント
- よくある落とし穴
- 開業までのフロー
を、初めての方でも理解できるように丁寧に解説します。
読み終わる頃には、「開業準備で迷う点」が全部クリアになっているはずです。
目次
パン屋開業に必須の許可は「営業許可」だけ

パン屋の開業に必要な許可は、食品衛生法に基づく「営業許可」 です。
窯(オーブン)を置き、販売をする通常のベーカリーは 「飲食店営業」ではなく “菓子製造業” や “飲食店営業+菓子製造業” に分類されます。
※自治体によって呼称が若干異なります。
営業許可の取得先
各自治体の 保健所 です。
参考:厚生労働省「営業許可制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055273.html
パン屋開業のご相談でよくあるのが、
- 「内装工事が終わってから申請しようと思っていた」
- 「そもそも営業許可の種類を間違えていた」
というケースです。
営業許可は 工事着手前の図面チェック が重要です。
換気・手洗い場・シンク数など、工事後では修正が難しいポイントがあるためです。
“内装工事の前”に保健所へ図面を持ち込むのが鉄則です。
必ず必要な資格「食品衛生責任者」

パン屋の営業には、必ず店内に 食品衛生責任者 を1名配置する必要があります。
資格は 1日の講習会で取得可能 で、費用は1万円前後です。
参考:東京都福祉保健局「食品衛生責任者養成講習会」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuei/index.html
「専門学校を出ていなければ取れない」と誤解される方が多いのですが、食品衛生責任者は 誰でも取得できる一般資格 です。
ただし、注意点がひとつ。
講習会は予約が取りにくい。
特に4〜7月は申し込みが集中し、「オープン日に間に合わない」というトラブルが毎年起きています。
開業が決まったら、最初に“食品衛生責任者の予約”を取ることをおすすめします。
保健所が開業時にチェックする5つのポイント

保健所が開業前検査で必ずチェックするのは次の5項目です。
手洗い設備の数と位置
→ 調理場+トイレの2箇所以上必須。
3槽シンクまたは2槽+消毒
→ オーブンに合わせた水量・給排水の能力も確認。
冷蔵庫・冷凍庫の容量・温度管理体制
→ 温度計や記録シートが必要な自治体もあり。
動線と作業区分(有害区域の分離)
→ 生地の仕込み・焼成・包装の動線が交差していないか。
給湯設備・換気設備
→ 湿度の高いパン工房は、換気基準を満たしていないと不備扱いに。
現場で最も多い修正は 手洗い場 と 動線 です。
特に12坪以下の小型ベーカリーでは、設備が密集するため、「換気フードの位置の関係で手洗い場が遠い」などの理由で再工事になることがあります。
“図面段階で保健所に相談”が、最もコストを抑える方法です。
工事後の修正は10~100万円の追加費用になるケースがあります。
開業前にやりがちなミスと防止策

営業許可の種類を間違える
→ 菓子製造業/飲食店営業 の区分を必ず確認。
図面の事前相談をしない
→ これが最も多い失敗。工事やり直しの原因に。
食品衛生責任者の講習予約が間に合わない
→ 開業が2〜3週間遅れるケースが現実に発生。
トイレの配置が不適切
→ 調理場と直結してはいけない自治体もあり。
パン屋の場合、機械の置き方ひとつで動線が大きく変わります。
窯(オーブン)・ミキサー・作業台・ショーケースの位置を決める前に、必ず “許可の目線でのレイアウト” を組み立ててください。
「使いやすさだけで決める → 許可が通らない」というケースは本当に多いです。
開業までのスケジュール例(30〜60日)

Step1:図面作成・保健所の事前相談(1〜2週間)
- レイアウト案を作り、保健所で確認
- 設備要件を反映して工事図面を確定
Step2:食品衛生責任者の講習予約(同時進行)
- 開業日までに資格を取得しておく
Step3:内装工事(2〜4週間)
- 給排水・換気・什器の位置が許可要件に準拠しているか確認
Step4:営業許可申請 → 開店前検査(1週間〜10日)
- 検査に合格すれば即日〜数日で許可証が発行
パン屋の工事は 火力・給水・電力 の3点が重く、普通の飲食店より設備要件を満たしにくい傾向があります。
そのため、「保健所チェック → 工事 → 再チェック」という二度手間にならないよう、最初の相談が何より重要です。
よくある質問(FAQ)

Q. 保健所の検査はどんなことをされる?
A. 設備・衛生・動線の実地確認が中心です。
手洗い、換気、清掃状態などが主なチェック項目です。
Q. 自宅の一部でもパン屋は開業できる?
A. 可能ですが、住宅部分と工房を完全に区分できる構造が必要です。
Q. 喫茶スペースを併設する場合の許可は?
A. 飲食店営業許可+菓子製造業許可 が必要なケースが多いです。
まとめ:許可は「早めに・順番通り」がすべて

パン屋の開業許可は、慣れてしまえば決して難しいものではありません。
しかし 「順番」 を間違えるだけで、工事費・スケジュールが大きく狂ってしまいます。
- 図面を工事前に保健所へ
- 食品衛生責任者の講習予約を最優先
- 設備要件を満たすか事前にチェック
- 営業許可の種類を必ず確認
この4つを押さえれば、開業準備はスムーズに進みます。
BakeryBizでは、開業前のレイアウト相談や許可取得の事前チェックも行っています。
迷ったらお気軽にご相談ください。
あなたのパン屋が、安心して地域に愛される一歩を踏み出せますように。
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この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
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監修・執筆:BakeryBiz編集部
※本記事は公開情報と筆者の実務経験に基づき執筆しています。統計値は出典の算出方法・時点により変動します。
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