パン屋のメニュー開発と差別化戦略|“売れるパン”を生み出す考え方と実践ステップ

おいしいパンは作れる。でも“売れるパン”が作れない。
多くのパン屋オーナーが抱える共通の悩みです。
BakeryBizの開業・経営支援でも、ヒット商品を生み出す店舗ほど、「味」よりも「設計」に力を入れています。
この記事では、パン屋のメニュー開発を「戦略」「顧客」「利益率」の3軸で解説。
さらに、成功した店舗の開発プロセス実例と、差別化の考え方を紹介します。
目次
メニュー開発は「経営戦略」である

パン屋のメニューは単なる商品ではなく、「経営方針を形にしたもの」です。
売上構成の約70%は、上位10アイテムで占められます。
つまり、“何を作るか”がそのまま“どんな店になるか”を決めます。
メニュー開発を「感覚」で行うと、季節や流行に左右されてブレが出ます。
成功している店舗ほど、“誰のために”“どんなシーンで食べられるか”を明確にしています。
「誰の冷蔵庫に入るパンか?」を想像することが戦略の出発点です。
売れるパンの共通点:データが示す購買心理

BakeryBizが支援した店舗データを分析すると、「リピート購入されるパン」には共通点があります。
| 要素 | 売れるパンの傾向 | 解説 |
|---|---|---|
| 味覚設計 | 甘さ・塩味のバランスが中間値 | 幅広い層に受け入れられる |
| サイズ感 | 片手で食べられる・100〜180円帯 | 買い足し・複数購入が増える |
| 名称 | 親しみやすく検索されやすい名前 | ネーミングは購買率に影響 |
| 陳列位置 | トレー最前列・目線の高さ | 視覚誘導で売上+20% |
パンの「味」を変えなくても、「伝え方」と「見せ方」で売上が変わります。
“手に取られるパン”は、“選びやすいパン”。
商品名・POP・配置は“メニュー開発の一部”だと考えてください。
商品構成の最適バランス:定番×季節×実験枠

売上を安定させるためには、「構成の設計」が重要です。
| カテゴリ | 割合 | 目的 |
|---|---|---|
| 定番商品 | 60〜70% | 安定収益・リピート確保 |
| 季節限定 | 20〜30% | 集客・話題性 |
| 実験商品 | 10% | 新規顧客・トレンド検証 |
「新商品を出し続けること=成長」とは限りません。
本当に強い店は、定番を磨き続けて季節で遊ぶ。
そして“実験枠”をやめないこと。挑戦の10%が、次のヒットを生みます。
利益を生むメニュー開発:原価率と売価設計

パンの平均原価率は**25〜35%**が目安。
ただし、人気商品・主力商品・季節商品で「粗利バランス」を取る必要があります。
| 区分 | 原価率目安 | 売価設定の考え方 |
|---|---|---|
| 主力(看板)商品 | 35%前後 | 売上の柱。多少の原価UPも許容 |
| 利益確保商品 | 20〜25% | 惣菜パン・菓子パンなどで調整 |
| 季節・限定商品 | 30〜40% | 話題性優先。粗利よりPR重視 |
利益設計は“個別商品”ではなく“全体構成”で考えること。
たとえば食パンが利益薄でも、利益率の高いお惣菜パンが支えていれば黒字化します。
経営は「パン単位」ではなく、「構成単位」で見るのがプロの視点です。
差別化の3方向戦略と成功事例

パン屋が取り得る差別化の方向性は、次の3つに整理できます。
| 戦略タイプ | 主な方向性 | 実例 |
|---|---|---|
| コンセプト差別化 | 世界観・物語で差別化 | 例:ストーリー付き食パン専門店「〇〇」 |
| 商品差別化 | 食感・素材・見た目 | 例:米粉×天然酵母のグルテンフリー食パン |
| 顧客体験差別化 | 店内・包装・接客 | 例:子どもと一緒に焼ける“体験型ベーカリー” |
差別化は「奇抜さ」ではなく、「一貫性」。
お客様に“選ばれる理由”を1行で説明できるかが勝負です。
成功する店は、「何をしないか」を明確にしています。
開発プロセスを仕組み化する方法

メニュー開発は“閃き”ではなく“検証サイクル”です。
次の流れを毎月ルーチン化するだけで、ヒット確率が上がります。
- アイデア出し(市場・SNS・顧客声)
- 試作→原価計算→社内試食
- テスト販売(数量限定・週末のみ)
- 販売データ分析→改良→定番化
「一度作ったら終わり」ではなく、「数字が良ければ続ける・悪ければ改良」。
成功している店は、パンを“製品”ではなく“プロジェクト”として扱っています。
まとめ:小さなパン屋こそ“戦略的メニュー開発”を

- メニューは“経営戦略の鏡”
- 売れるパンは“買いやすく”“覚えやすく”“続けやすい”
- 定番×季節×実験の構成をバランス設計
- 原価率30%前後・廃棄率5%未満を目標に
- 差別化は「奇抜さ」ではなく「一貫性」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
パン屋を続けていると、日々の仕込みや販売に追われて“新しいことを考える時間”を取るのが難しくなりますよね。でも、メニュー開発は「特別な時にやること」ではなく、「日常の延長線にある戦略」なんです。
「今日はどんなお客様が買ってくれたか」「このパンは何個残ったか」そのひとつひとつのデータが、次のヒット商品のヒントになります。
パン作りの技術が成熟している今、差が出るのは考え方の部分です。
「なぜこのパンを作るのか」「誰に届けたいのか」
この問いを繰り返すことで、あなたのパン屋にしかない“らしさ”が生まれていきます。
トレンドに左右されず、自分たちの強みを軸にしたメニュー開発をしてください。
菓子パンでも食パンでも、「この店だから買いたい」と思われる瞬間を作れたら、それが最高の差別化です。
もし迷ったら、一度立ち止まって“お客様の食卓”を想像してみてください。
きっと、次に作るパンの形が見えてきますよ。

この記事書いた人
BakeryBiz コンサルタント 山本 遼
(M&A・ブランド支援担当)
年商億規模のパン屋を経営し、事業売却を経験。
現在は全国のベーカリーを対象に、M&Aや事業承継を支援。
現場視点と実務知識を活かし、納得のいく譲渡をサポート。
株式会社アルチザンターブルは、中小企業庁のM&A支援機関に登録されており、「中小M&Aガイドライン」を遵守した適正な支援を行っています。
M&A支援業者への手数料を補助する「事業承継・M&A補助金」も条件に応じご活用いただけます。
役立つ参考リンク
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監修・執筆:BakeryBiz編集部
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